教養としての社会保障
社会保障と言われて、ピンと来ますか?
特に若い世代の方には関心が持たれない話かもしれません。
今回は香取照幸さんが書かれた書籍「教養としての社会保障」を読みました。
香取さんは「年金を改革し介護保険を作った元厚労官僚」の方なのだそうです。
日本の社会保障が出来上がった背景などを詳しく解説しています。
社会保障の世界では毎年年間100兆を超えるお金が動いている。
社会保障制度の仕組みはとにかくお金がかかります。
年間100兆円
2016年度は118兆円の実績だったそうです。
2017年度は約532兆円なので、日本のGDPの約2割が社会保障に使われていることになります。
内訳で見ると高齢者関係給付が大半を占めるそうなので、高齢化社会が進む日本ではますます社会保障費がかかることになります。
制度設計がとにかく難しい。
特に強調されているのが、制度設計の難しさにあると述べられていました。
制度を設計している側は、全体の様々なことを見渡して、社会的なコストはなるべく小さくした上で、サービスはなるべく充実させるという相反することの最適解を考える。
しかし、実際にサービスを受けている側からするとそんなのはどうでもいいこと。
「私をどうしてくれるの?」という考えになる。
制度の全体像=マクロの風景と、市民一人ひとりにとってのミクロの風景が、もの凄く乖離している点、そこに難しさがあると述べられています。
セーフティネットとしての役割。
社会保障はセーフティネットとしての役割があると述べられています。
セーフティネットは「人々が自分の能力や可能性を最大限に発揮して自己実現をする」その挑戦を支えるものであると。
たしかに、トーナメント戦のように一回負けたら一生這い上がれない世の中なんてイヤですよね。
リーグ戦のように何度でもチャレンジをしていける世界の方がよっぽど素敵です。
最後に共感できた内容をご紹介します。
社会全体から見れば、落ちこぼれた人間をつくらず、誰もが常にプレーヤーとして社会の中に存在しているようにしていくということであり、一人ひとりの人間からすれば、自分の尊厳を守り希望を持って自立して生きていけるということでもあります。そういう社会をつくるのが社会保障の目的です。
こんな風に社会のために制度をつくって形にしてくれた方がいたからこそ、健全な競争原理が働く社会になっているのかもしれません。
モノの見方次第で、本当に見え方って変わってくるものなんですね。素晴らしい書籍だと思います。