人は誰しも楽な方向に流れやすい——そんな「性弱説」を前提に、接し方や仕組みを設計する。高杉康成氏による本書は、世界屈指の高収益企業キーエンスの経営哲学を通じて、成果を出し続ける組織の作り方を明かします。
単なる精神論ではなく、事実に基づく判断、論理的思考、そして高付加価値の生み出し方が具体的に示されています。
ここでは本書の重要ポイントを3つに整理しました。
「性弱説」を前提にした仕組みづくり
誰でもつい楽な方に流れる——この人間の本質を否定せず、前提として受け入れることが、キーエンス流の出発点です。だからこそ、個々の自助努力に頼るのではなく、自然と成果が出るような接し方や仕組みを設計します。
例えば、明確な基準やプロセスを定め、迷いや怠慢を防ぐ。人が弱さを発揮しても、結果的に正しい行動に向かうような環境を作る。この発想は、長期的に安定した成果を出すための強力な土台となります。
事実に基づく顧客視点の徹底
本書では、顧客の発言をそのまま鵜呑みにするのではなく、「意見」と「事実」を切り分ける重要性が強調されています。顧客が感じている困りごとを、感覚や感情ではなく、数字や現象として捉えることで、真に価値ある提案が可能になります。
また、単に価格を下げて勝負するのではなく、「高く売れるモノを探して安くつくる」という発想が示されています。付加価値を最大化し、利益率を高めるためには、商品やサービスの設計段階から顧客ニーズと事実を突き合わせる姿勢が欠かせません。
戦略は細部に宿る
キーエンスは、最小の資本と人員で最大の付加価値を上げることを目指します。そのためには、仕事の「密度」を高め、論理的思考で物事を因果関係やメカニズムから捉える必要があります。
「戦略は細部に宿る」という言葉通り、成功は小さな改善や精度の積み重ねから生まれます。大きな方向性だけでなく、一つひとつの手順や条件を突き詰めることで、組織全体の生産性と収益力を高めることができるのです。
人の弱さを受け入れ、それでも成果を出せる仕組みを作る。それが、長く勝ち続ける組織の条件です。
Thinking Point
