AI VS. 教科書が読めない子どもたち
AIという言葉が新聞紙上を賑わせています。
働き方改革という言葉に相俟って、実現手段としてのAI技術が着目されています。
我々は将来、AIというテクノロジーにどのように向き合っていけば良いのでしょうか?
今回は、数学者の新井紀子さんの書籍「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」を読みました。
人生100年時代と言われる中、どのようにAIと付き合うべきなのか、そのヒントを探るべく読んでみました。
AI時代に残る仕事。
この手の話になると必ず出てくるのが、どの仕事が無くなり、どの仕事が残るのかという話。
「残る仕事」の共通点を探してみると、コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事や、介護のような柔軟な判断力が求められる肉体労働が多そうです。
しかし、本当にそれだけなのか。それは、AIの本質を掴んだ上での話なのでしょうか。
本記事をお読みのみなさん、一度ぜひ考えてみてください。
AIの本質とは。
AIには、意味を理解できる仕組みが入っているわけではなくて、あくまでも、「あたかも意味を理解しているようなふり」をしているのだそうです。
その上でAIの弱点を考えると以下のようなものが挙げられます。
・万個教えられてようやく一を学ぶこと
・応用がきかないこと
・柔軟性がないこと
・決められたフレームの中でしか計算処理ができないこと
つまり、AIには「意味がわからない」ということです。
ですから、その反対となる次の力があればAI恐るるに足らずということになります。
・一を聞いて十を知る能力や応用力
・柔軟性
・フレームに囚われない発想力
そして、本書曰く「総務」とか「会計」とか「商品開発」のように名刺を見たら何をしているのかわかるような仕事は、
何をしているかがわかるが故に、AIに代替されやすく、先細って行くと思われます。
しかし、「何の仕事とはっきりは言えないけれども、人間らしい仕事」は、AIに代替されることなく、残っていくということなのだそうです。
重要なのは柔軟になることです。人間らしく、そして生き物らしく柔軟になる。そして、AIが得意な暗記や計算に逃げずに、「意味を考えること」だと述べられています。
AI導入で淘汰される企業
「情報の非対称性」という言葉があります。
これは、売り手と買い手の間において、売り手のみに専門知識があって、買い手はそれを知らないというように、双方で情報と知識の共有ができていない状態のこと。
まさに、中古車市場はその典型だと言われています。
「需要と供給が一致したところで価格は決定される」という大原則に立ってみれば、このような情報の非対称がある市場は最適化されていくと考えるのが自然です。
本書においても「自ら検索し、情報を読み取り、比較できる賢い消費者」だけが、情報の非対称性を見破り最適化しているだけですが、AIに任せると「誰もが」そうできるようになると述べられています。
つまり、AIは自ら新しいものは生み出さない一方で、コストを劇的に減らすようにできるようになるということです。
そして、最終的には本来はAIにさせることによってコストを圧縮できるはずなのに、それをしなかった企業は市場から退場することになるということを示されています。
この予測から考えると、単に情報格差だけで利益を得ていた企業は淘汰されるということが言えるのではないかと思えます。
私たちにとってはありがたいことかもしれませんが、新しい価値をどのように定義していくかということがとても大事になってくるとも言えそうです。
まだ見ぬAI時代に不安を感じる方は多いかと思います。
本書では、最後に次のようなことを述べていました。
AI時代の先行きに不安を感じ、起業に関心のある方は、是非、世の中の「困ったこと」を見つけてください。そして、できない理由を探す前に、どうやったらその「困ったこと」を解決できるかを考えてください。デジタルとAIが味方にいます。小さくても、需要が供給を上回るビジネスを見つけることができたら、AI時代を生き抜くことができます。私達が、人間にしかできないことを考え、実行に移していくことが、私達が生き延びる唯一の道なのです。
とてもパワフルなメッセージですね。
今から、何ができるのか考えておくことがとても大事ですね。
AIの本質を掴み、我々が何をすればよいのかかがわかる良書です。